前回の振り返り


前回は、カメラは光を取り込む機械で、写真が生まれた時から原理は変わっておらず、写真=光の量=単位あたりの取り込む光の量×時間で求める面積で考えましょうという話でした。

今回は、カメラの中では面積をどのような変数として分解しているのか、という説明の為、Apex Systemという算式を説明していきます。

Apex Systemの考え方


これまでは、単位あたりに入る光の量や、光を捕まえる効率、時間という言葉を使っていましたが、これがApex Systemの考え方の基礎になっています。

式自体は非常に簡単です。

EV(Exposure Value) = AV(Aperture Value) + TV(Time Value)

これは小学1年生の算数ですね。ただ、いきなり、英語が出てきたので、日本語で言い直したいのですが、不思議なことに、Exposure Valueが「露出値」という言葉があるだけで、特にAperture Valueなんて日本語訳を見たことがありません。カメラが海外から入ってきたからなのか、日本だけが写真は感覚で撮るものという文化だからなのかは分からないですが、不思議ですね(カメラメーカーはこの考え方でカメラやレンズを設計するので、おそらく写真家側の問題なんでしょうね)。

ちなみに、Wikipediaさんによると、Apex Systemは、1954年にドイツのFriedrich Deckelというシャッターメーカーが考案して、他のメーカーに広まったそうです。

入ってくる光の量(Aperture Value)とは


Apex Systemの式が出てきた所で、AV(Aperture Value)をもう少し詳しく深堀りしないと、カメラの算数にたどり着きません。もうちょっとだけ頑張りましょう。さて、下の円の図は入ってくる光の量(面積)と、AV・f-number(絞り値)の関係を示しています。ニワトリと卵の関係になるのですが、AVはf-numberで計算されているのです。

AV1Step上がる(f-#1Step上がる)毎に、円の面積が半分になる(暗くなる)

ここで、なぜf-numberが関係するのと言う疑問に答えるために、AVの計算式を見てみます。

Aperture Value = log2f-number2

2を底にした単純な対数式ですが、アレ?と思いませんか。AVは入ってくる光を数値にしたものですから、要は単位時間辺りの光の量=レンズを通って入る時の円の面積です。f-numberは面積計算をする時の分子で出てくる半径に関する数字の逆数になっています。

分かりにくいので、具体例を書いてみます。

例えばAVが0→5になる、つまり5Step上がる時、面積は1/25 = 1/32
この時、面積はπR2なので、半径を割る数字Rは√32 = 5.6

意味不明な飛び飛びの数字のf-numberですが、こうやって計算で出てきたのですね。

光を捕まえる効率と時間


次は、TV(Time Value)です。要は時間なのですが、AVと比べると、こっちは比較的カンタンです。

1秒をTV = 0として、TVが1Step上がる毎に、Shutter Speed(SS)の時間が1/2になります。

TV1Step上がる(SS1Step上がる)毎に、時間が半分になる(暗くなる)

縦軸が2を底にする対数目盛なので直線になっていることには気をつけて下さい。Excelの表記上1/512(カメラだと1/500表記ですね)が一番短いことになっていますが、ハイアマチュア機以上だと1/8000まで対応しているのでTVは13が上限であることが多いです。時間が長いマイナス方向は、理論上はずっとシャッターを開けっ放しにすることができるので上限は無いのですが、CMOSセンサーの安全性のため、30秒が上限になっている事が多いです(バルブ撮影だと30秒を超えられますが、熱ノイズがどんどん出てきます)。

光を捕まえる効率、ISO感度


光を捕まえる効率は、ISO感度(ISO Speed)と言います。普通のデジタルカメラの場合は、ISO100辺りが最低値であることが多いです。

ISO感度は100→200→400と1Step感度が上がる毎に2倍されていきます。ISO感度が1Step上がれば、シャッタースピードが1/2短くなる、ISO感度とシャッタースピードだけを考えれば反比例の関係になります。当然、シャッタースピードを長くして、ISO感度を上げる場合もありますから、使い方自体は反比例ではありません。ちなみに、絞りを開放にしてシャッタースピードは15秒か30秒、ISO感度は3200や6400を使って撮影するものがあります。星空です。目では見えない星の光をカメラが捉える事ができるのですね。

結局、何が言いたいのかと言うと

Apex Systemの話からいきなり話が難しくなったけれども、何が言いたいか言うと、写真の明るさの計算は、f-numberと、シャッタースピード、ISO感度が何Step変動したか、足し算と引き算をするだけでどの位の明るさになるか分かるという事です。

例示で変数を動かした場合のEVの変化を下のチャートでは記載しています。

ここでは1Step毎に設定を動かしていますが、デジタルカメラでは1/3Step毎に設定を変化させる事が一般的です。

おまけ


Apex Systemで計算した絞り値、シャッタースピード、ISO感度の変化表を付けておきます。

また、カメラの露出制御について詳しく解説が記載している連載がありました。

参考
人の眼と器械(カメラ)の眼・・・カメラの露出制御